131日目前半:七つの坂と八つの峠

七坂八峠を歩く 歩記

日本縦断131日目(2016年10月13日)

夜中に銃声!?「パン!パン!パン!」

昨晩も野宿だったわけだが、この日はいつもとは違う夜だった。

僕らは疲れ果てて暴風の音さえも無音に感じるくらいぐっすり寝ていた。あれは何時頃だっただろうか。辺りはまだ真っ暗だったので深夜だったと思う。

僕らが深い眠りに入っていると、突然すぐ近くで

「パン!パン!パン!」

と銃声のようなかなり大きくて乾いた音がした。音の大きさからして数メートルに感じた。そして何やら男性の声や足音がテントのすぐそばで聞こえてきた。

僕は「いたずらか!?とうとう変な連中に襲われるのか!?」と不安になった。と同時に、妻には動かず眠っているようにと指示した。僕は意を決して一人で外に出ることにした。戦うか、人数が多ければ敢えて仲良くなるか、臨機応変に対応しなければならない。いずれにせよ妻だけは無事に逃がさねばならない。

相手に気付かれないよう僕は慎重にテントのチャックを数センチずつ、ゆっくり、そしてまたゆっくりと開けていった。すると30メートルくらい離れた場所に車が止まっており、そばには人影も見えた。

まだこちらには気付いていない。じっくり見ていると、その人物は何やらひらぺったいものを何かに叩きつけていた。

「パン!パン!」

どうやら車の足元のマットのようだ。もしくは海水浴場なのでフィン(足ひれ)かもしれない。付いた砂でも払っているのだろう。アスファルトに叩きつけている。おそらく僕らのいるあずまやの壁でも同じことをしたのだろう。

銃声ではなくとりあえず一安心した。その後も少し不安ではあったが、何もなさそうなので僕は再びテントに戻り眠りについた。

朝起きて妻にこの事を話すとまるで記憶にない様子。どうやらあの時は寝ぼけていたようだ。

それにしても今朝は冷える。そういえば僕らはまだ夏服しかもっていないんだった。僕はガタガタ震えながらテントを片付けた。

七坂八坂に挑む

支度ができると僕らは歩き出した。今日の朝食は手持ちのお菓子と道の自販機で買ったホットコーヒーだ。この辺は民家ばかりで何もない。しばらく歩くうちに陽も出てきて、歩きだしたことで体温も上がっていった。

131日目の朝食

身体が温まった頃、僕らは分岐点(県境の山の直前)にいた。この先、真っ直ぐ進めばわずか数㎞で済むのだが、残念ながら歩行者は進入禁止のようだ。

仕方なく僕らは峠を越えることにした。

実際に進んだコース(七坂八峠)
七坂八峠

本来進みたかったコース
七坂八峠を避けるために作られた東浜居組道路

この2枚の写真は「西脇海岸展望」から見た「七坂八峠」。今から前方に見えるあの峠を越える。
西脇海岸展望

西脇海岸展望から見た七坂八峠

上の写真は「西脇海岸展望」から→方向に「七坂八峠」を見たもの。
西脇海岸展望と七坂八峠

小さな集落を抜けるとこんな所に本当に道なんかあるのか?というほど、いかにも使われていなさそうな道に差し掛かった。

しかしナビ役の妻いわく、グーグルマップはこのルートを指しているし他に道はないという。地図にある曲線を見る限りこれは峠だと分かった。肉眼でも目の前には山しか見えない。

覚悟を決め歩き出すと案の定、どんどん、どんどん山の中に入っていった。上りはじめてすぐ、右を見ても左を見てももう森の中だった。勾配はなかなかのもだったが、それに加えて道はくねくねと右へ左へ何度も曲がりながら登って行った。

七坂八峠を上り始める

さっきまで寒さで震えていた身体から汗がどばどばと出てくる。たった15mくらい歩いただけで呼吸は乱れ、筋肉もつりそうになる。七坂八峠はそれほどきつい峠だった。

しかし森や木々その隙間から見える海が僕らを癒してくれた。普段こんな自然に囲まれて歩くことなどないのでともて清々しかった。自然は本当に素晴らしいなと、一歩一歩歩む毎にその大切さを噛みしめた。

七坂八峠から見た景色を撮影

七坂八峠から見た景色

しかし残念ながらその清々しさもそう長くは続かなかった。

外から見ると綺麗な森。中に入るとゴミの山。

一見、この森は遠くから見ると綺麗な緑色でそばには海もありとても癒される光景なのだが、残念なことに中に入るとゴミの山だ。そう、不法投棄というやつだ。

ここは人通りは全くなく、車もほとんど通らない。だから不法投棄が後を絶たないようで、いたる所に監視カメラや警告する看板が立てられていた。ゴミは古い物から新しい物まであったので、日常的に捨てられているのは容易に分かった。

投げては到底届かないような森の奥にまでゴミが散乱していたので、恐らく人間が崖から投げ捨てたゴミを動物たちがあさって森の奥に持っていってしまうのだろう。

実に悲しい事だ。しかし僕らは旅をして隠された現実も知ることができた。これをいつか人生に活かしたいと思う。

七坂八峠のゴミ不法投棄

近くに見えるが、望遠レンズで撮っている。人間が投げても届かない所にまでゴミが散乱している。
森の奥までゴミが散乱している

森の奥までゴミが散乱している

散乱したゴミ

浜坂でちょっぴり観光気分

やっとの思いで峠を越えた僕らは、ちょうど街に入ったということもあり昼食を取ることにした。どうやらここ「浜坂」は観光地のようで、観光案内所もある。僕らはそこでおすすめされた地魚が食べられるお店に行くことにした。

日々コンビニのおにぎりやお菓子で食事を済ませいているので、この辺でちょっぴり観光気分を味わいながら栄養補給もしておきたかった。

兵庫県美方郡新温泉町浜坂の地魚ユッケ
兵庫県美方郡新温泉町浜坂にて

浜坂の地魚海鮮丼
浜坂の地魚海鮮丼

浜坂の地魚さしみ定食
 浜坂の地魚さしみ定食

久々の上手い飯で気分も腹も満たされた僕らは、その後の歩きも快調だった。そして順調に今日の目的地である「道の駅あまるべ」に到着したのだが、僕らはもう少し先に進むことにした。しかしこれが命の危険を感じるほどの体験になるとこの時は想像もしていなかった。

後半に続く

コメント

  1. 濱中弥生 より:

    ビックリしたね❗
    読んでてこんな田舎でまさかの銃声?
    何事もなくて良かったです😊
    野宿する以上危険は付き物ですもんね❗

    山陰の日本海側は
    鳥取県、兵庫県、京都まで国立公園とかで
    「山陰海岸ジオパーク」って綺麗な海岸があるって聞いてたけど………
    車で通っても気づかない、歩いてるからこそ不法投棄とか嫌な所も見えてしまうんですね‼
    でも…
    頻繁に不法投棄されてるところに看板や監視カメラ等設置されているのによくならないんですね😅
    モラルの問題ですね
    綺麗な所ばかりPRしてても意味がないのでは?
    考えさせられるところです。
    浜坂で美味しい海鮮物食べられたんですね🎵
    さてさて、つづきは……?

    • あきら より:

      本当に銃声のかと思って目が覚めたので、何事もなくで良かったです(><;山陰海岸ジオパークは綺麗でした!山もあるし歩くとまた違った綺麗な景色がみれると思います(^-^)

      不法投棄は本当に残念です。一部の人だとは思いますが、恐らく常習的になっているのでしょう。こんな山の中に監視カメラっていうのは異様な感じでしたが、それでも止まないので社会問題として取り組まなければいけないと個人的には感じました。

      浜坂の海鮮美味しかったですよ(^-^)

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