欲望のコントロール、そして足るを知る者は富む

足るを知る者は富む 歩記

半自給自足なのに高級

僕らはここ油谷であるご夫婦に出会った。その方たちは現金収入を得る仕事と共に畑や尼漁をしながら半自給自足生活をしている。

せっかく油谷に来ているからと、ご夫婦は僕らを自宅に招いて食事をふるまって泊めてくれた。自宅は都会にあるような世間が想像する“立派な家”では決してなかった。

しかしそこには都会では決してない充実感があった。幸せで満たされている生活があった。もちろんこれは僕らの主観である。本人たちがどう思ってるかは分からないが、その表情から読み取れるものは多い。

自給自足と聞くと貧しさを想像するかもしれない。僕らも触れるまではそうだった。

しかしいざ触れてみると、食べている物は都会では高価な値で取引されるものもばかりだし、住んでいる場所も都会の人たちが大金をはたいてでも欲するものばかりだ。

森の中の静寂や輝く星で埋め尽くされた眩しい夜空、朝陽がサンサンと差し込む棚田、心地よい風と自然の恵みをくれる海、すぐそこでもぎ取れる新鮮で安全な野菜たち、どれをとっても都会の人からすれば高級なものばかりである。

そんな環境でご夫婦は生活している。

コンビニまで約30分、スーパーまで約40分。街までは50~60分といったところだろうか。それでもご夫婦は不満を感じていない。(ように見える。)

「足るを知る者は富む」というが、まさにお手本だった。

真の経済は幸せのために存在する

僕はビジネスが好きなので経済はとても重要だと考えてはいるが、お金や売り上げ、会社の規模拡大などという類の経済に支配された人生を送ることは間違っていると思っている。

僕はお金(額)自体にはあまり価値はないと思っている。お金は稼ぎ方と遣い方にこそ本当の価値があると思っている。

人は誰もが幸せになりたいという人類共通の願いはあるが、それをお金で買えると思っている現代社会は間違っている。お金に目がいけばいくほど他者を蹴落としたり、他者から搾取したりしてしまう。自分の力だけでは自分の欲は満たせないからだ。欲とはブラックホールである。だから他人からもどんどん奪わなければ足りないのだ。

本当の経済は幸せのために存在しなければならない。真の経済からすれば、そういう現代社会はまだ発展途上と言えよう。

[voice icon=”https://1hokki.com/wp-content/uploads/2016/07/akira-kao.jpg” name=”あきら” type=”l”]ここにおすすめの本を紹介する。

世界でいちばん大切にしたい会社 コンシャス・カンパニー (Harvard Business School Press)

400ページを超えるボリュームだが、21世紀の経済はまさしくこの本の通りに進んでいると個人的には捉えている。要は「自分だけ、あるいは一企業だけ儲けるといずれ崩壊する。ステークホルダー(利害関係者:お客、社員、社員の家族、取引業者やそこの社員、ビジネスを展開する街など)全体で成長していこう。」というものだ。ちなみにこの本には最後に日本の小さな企業も出てくるが、僕ら夫婦はその会社(鎌倉投信)に見学にも行ってきた。

特に起業したい方や経済に興味がある方におすすめの良書だ。[/voice]

搾取や蹴落とすことが成長や競争だからと目を背けようとする企業や人間も多いが、結局幸せになれなければ経済は意味を持たない。そういった思考の人間や企業から物やサービスを供給されても利用者は真の満足はしないし、その他の利害関係者もまた心の底では嫉んだり、離れて行ったりするものだ。そしていずれはその問題が大きくなり破滅への道を辿るのである。

足るを知る夫婦は富んでいた

しかし先のご夫婦には他人を蹴落とそうとか、自分だけ良い思いをしようとかそういった思考は感じられない。表情や言葉、話し方、接し方、色んな場面で幸せに生きているのが伝わってくる。心に余裕があるのだ。

だから僕らにも優しさをお裾分けしてくれるのだろう。

まさに足るを知る者が富んでいるのだ。

このご夫婦は何でもかんでもお金で手に入れようとする現代社会から脱出し、自分たちとしっかり向き合い、必要なモノとそうでないモノを見極め生きているのだ。

以前にも何度か書いたが、僕の今の課題は「欲の制御」である。欲望に支配された人生など幸せになれないのは「歴史を見れば・・・」などと言わなくても周知の事実であろう。

欲に支配されれば結局一番欲しい“幸せ”は遠ざかっていく。しかし欲が無ければ努力や成長がなくなるので、大事なものであることも事実。要は“欲を制御する能力”が必要なのだ。

このご夫婦と出逢って、その欲のコントロールの仕方を学べた気がする。

「足るを知り、そして怠けない者は幸せを掴む」僕はそう思う。

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