日本縦断18日目(2016年6月22日)
炊き出し開始
中学生が部活を終え続々と帰宅し始めた頃、炊き出し作業が再開された。休憩に入ってから2時間近くが経とうとしていた。
まず80人分(数ははっきり覚えていない)のうどんを茹でるのだが、これが大変な作業だ。業務用のコンロというのだろうか、一気に20人分くらいのうどんが茹でられるほどの大きさと火力のコンロで一気に茹でるのだが、少しでも目を離すとすぐにお湯が溢れ出るので頻繁に差し水をしなければならない。
差し水をする様子
この湯で作業は危険も伴っており、お湯がはねて火傷することもある。下手したら大量のお湯が自分たちにかかることもあるので、十分気を付けながら行った。
熱湯がかからないよう茹でる人以外は離れて待っている様子
男性陣はうどんの調理を担当していたが、妻ともう一人の女性は器を用意したりネギを切ったり、茹であがったうどんを器に盛りつけたりしていた。
僕も妻も初めての炊き出しで手際が悪く周りに迷惑をかけていたかもしれないが、何とか避難している方たちを待たせることなく炊き出しを配ることができた。
乾麺のうどんに救われる被災者
食べ終わった被災者の一人がお礼を言いに来てくれた。
炊き出しは乾麺のうどんだったのだが、「とても美味しかったです。ずっと似たような食事ばかりで、前からうどんが食べたかったんです。美味しかったです。皆さんおかわりしてましたよ!3杯食べた人もいました!ほんっとに有難うございます。」ととても丁寧にお礼の言葉を頂いた。
表情や声からは心の叫びのような、何かから抜け出せたような印象を受けた。中学校の体育館というプライベートの全くない空間で、あまり希望も言えなかったのかもしれない。
何だか表情は悲しさと感謝と戸惑いと申し訳なさと清々しさと色んな感情がこもっていた。お礼を言いに来てくれたその方は深々と頭を下げ、周囲の中学生の邪魔にならないよう、通路の端を肩を丸め膝を少し曲げてできるだけ体を小さくして歩いて去っていった。
そんな背中を見ながらほんの少ししか役に立てない自分がもどかしかった。
僕らにはただうどんを提供することしかできなかったのが辛かったが、唯一の救いはこの一杯で僅かな間だったかもしれないが救われる人がいたということだった。それならとても嬉しいことだと思えた。
本日の炊き出しの冷やしうどん
片付けは急ピッチで!
ここは学校なので無駄にゆっくりするわけにはいかない。学校側はあくまでも場所の提供をしているだけなので、我々は学校業務に迷惑がかならないよう最小限の時間と場所で炊き出しを行わなければならない。
なので全ての炊き出しの用意ができると当時に手が空いた人はどんどん片付けに入っていた。そして炊き出しが終わると急ピッチで残りの片付けを終え学校を後にした。
ボランティアだからといって相手(学校側)に配慮せず行動するのは許されないのだ。あくまでも影響が最小限に収まるよう行動しなくてはならないのだ。これもボランティア活動で学ばせてもらったことの一つである。
疲労困憊でも天気は容赦ない
ボランティアビレッジに着いたのは21時頃だった。ボランティアビレッジにはシャワー室も完備されているが、2つしかないので混雑する前に急いで入った。
そして今日の寝床もテントである。昨日の40km歩行やパンク事件、睡眠不足に加えて朝からのボランティア作業で疲労困憊(ひろうこんぱい)である。
厚さ20mm横幅51㎝の小さなマットと、着替えの入った圧縮袋の即席枕で疲れ切った体を休める。もう疲れすぎて疲れているのかすら分からない。ただ感覚という感覚が鈍っているのだけは分かった。
妻もそうとう疲れていることだろう。この旅についてきてくれたことに感謝するとともに、新婚旅行の代わりではないが、普通では味わえない経験をさせてあげられているという人生の伴侶としての務めを果たせている喜びも僕は感じている。(良い経験かどうかは見解が様々だろうが、妻は僕と似て旅も含めこの様な体験を貴重だと捉えるタイプだ。疲れてはいるが喜んでもいる。)
もうまぶたが限界だ。二人ともすぐに眠りについた。
しかし夜中の1時頃にテントを叩く雨の音がした。それは次第に強くなり、とうとうビレッジの本部の方が各テントを回り避難指示を出していた。ボランティアが被災地で被災したのだ。このボランティアビレッジでの水害は冒頭で触れた一昨日のも含めこれで二度目だ。
僕らは疲れきった体を持ち上げ、豪雨の中びしょ濡れになりながら急きょ用意してもらった本部事務所のプレハブに寝ることとなった。避難場所に来る途中、豪雨でどこかから流されてきたドジョウが砂利の駐車場でピチピチと跳ねていたのが印象的だった。
連日の疲労を癒すこともできず、他のボランティアの人たちと雑魚寝で僕らも再度浅い眠りについた。
2時間ほど経って雨が弱まったところでテントに戻り、3時間ばかりの僅かな睡眠をとった。それでもやはり睡眠は浅く何度も起きてしまう。
この時の精神状態はすこぶる悪かった。とにかく体をゆっくり休めたい。ふかふかのベットで何にも邪魔されずとにかく休みたかった。しかしそれが叶ったのは数日後のことだった。
これも旅だと諦め、その日を何とか乗り切ったのであった。
テント内に積み上がった荷物たち
厚さ20mm・横幅51㎝・縦183㎝のサーマレストのマット「Zライト ソル」
宿泊場所 | 崇城大学ボランティアビレッジ |
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歩行距離 | 歩行無し |
歩数 | – |
疲労度 | 20/10 |
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