29日目:都会は人は変えないが心は縛る

都会の真ん中に立つ旅人 歩記

日本縦断29日目(2016年7月3日)

とある母と勇気とエールの交換

昨日は宿泊施設がなかったため本来進むべき国道3号線を4kmほど外れ、ここ福岡県は朝倉郡筑前町のホテルにきた。今日はこの4kmをまた国道3号線に向かって戻らなければならない。往復で8kmのロス。時間にして2時間半くらいのロスだ。

朝食もしっかりとり準備を整えチェックアウトを済ませる。入り口で旅支度をしていると、ホテルの従業員の方や宿泊客の皆さんが驚きながらも声援をくれる。いつもの光景だが、感謝の気持ちが湧いてくる。

その中に僕らより少し年上の女性が深く興味を示してくれた。彼女とは朝食の時も会っていたので何となく覚えていた。話し込むうちにいつしか旅の話からその方のお子さんについての話になった。

彼女はとても優しい笑顔をする。話し方も柔らかい。しかしお子さんの話になるとどこか冴えない表情を浮かべていた。話を聞いていると、自分なりに一生懸命お子さんに向き合っているが、上手くいかず悩んでいる様子。

そういえば食堂では彼女しか見ていない。お子さんも一緒に宿泊しているようだが、部屋にこもって出てこないようだ。

子供のいない僕らには到底理解できないほど苦しみ悩んでいるのだろう。彼女は少し涙を見せていた。子供のために一生懸命色々やってきたけど、苦しすぎて今は右も左も分からないのかもしれない。どうしたら良いのか分からない。そんな表情に見えた。

しかし徒歩で日本縦断をしている僕らをみて勇気をもらったのだろう。

「苦しくでも頑張っている人(僕たちのこと)がいる。もう一度、自分も頑張らなきゃ!子供にもこうやって頑張ってる人がいることを伝えたい!」

そう感じているように見えた。すると話していくうちに涙を堪えながらも彼女の顔に笑顔が戻ってきた。

何があったかは分からないが、子供さんにも自分なりの考えや思いがあるだろう。しかしきっとお母さんの気持ちは伝わっているはず。きっといつか、「ありがとう」の言葉と共にお母さんと寄り添える日がくるだろう。

その時が来たらお母さんの苦労も喜びに変わるだろう。

もしこのブログを読んでくれていたら、僕らからもお母さんと子供さんにエールを送りたい。

大丈夫だから。

救えない命もある

この親子に何かしてあげられるわけではないが、きっと僕らが北海道まで完歩することでさらに勇気をあげられることだろう。そして親子が幸せになれるよう願って我々も前に進む。

空は晴れている。しかし若干曇もある。あとで雨が降りそうなそんな天気だ。しかし今は陽が出て結構暑い。今日は天神まで約23kmの道のりをゆく。暑いので小雨くらいは歓迎だ。

今日は途中で18年ぶりに従妹と会う約束をしている。この従妹とは「4日目後半:旅は縁の点と点が結びついたもの」に登場した僕らを助けてくれた伯父さん伯母さんの娘だ。

1時間ほど歩いたところで前方に何か黒い物が目に入る。

近付いてみると子猫だ。しかしなぜかズブ濡れだ。もしかしたら少し前に雨が降ったのかもしれないが、そんなに大雨ではなさそうだ。周囲の地面は既に乾いている。

子猫は尻尾をほんの少し動かすだけで全く動く気配がない。交通事故にでもあったのかと思ったが、濡れているのはおかしいし、大きな外傷も見当たらない。ほんの少しばかり首元に出血は見られるが本当に僅かだ。

顔を見ると既に瞳孔が開いている。僕の呼びかけにも反応しない。ほんの僅かだけ尻尾が振れる。そんな状態だ。救えるかわからないが、とりあえず体を拭いてあげた。

少し瞳孔が元に戻り口元が若干動く。僕は呼びかけながら体を拭き続けた。10分か、いや5分かもしれない。そうやって世話をしてみたがついには瞳孔が開ききってしまった。おそらくは旅立ったのだろう。もう尻尾も動かなくなった。

もしかしたらカラスにでも攻撃され、さらわれてきたのかもしれない。そばには水深の浅い川もあった。そこでいじめられて濡れたのかもしれない。何もわからないが、一人で逝かせなかったのがせめてもの救いだっただろうと捉えて僕らは前に進むことにした。

それにしても前回(15日目後半:死にゆく子猫)といい今回といいこの旅では子猫の死の境によく遭遇する。

また命の儚さを学んだ。

18年ぶりの再会(伯父さん伯母さん、娘は元気にしていたよ)

子猫を救えず落ち込んでいたが、ずっと落ち込むわけにはいかない。あまり感情移入し過ぎるのも良くないことは理解している。そうならないよう、気持ちを切り替えて歩いた。

すると遠くの方でゴロゴロと雷鳴がする。雨が降っているようにも見える。しかしここでは雨は降っていない。しばらく歩くと音もしなくなった。

ちょうど同じ頃に従妹に支持された待ち合わせ場所に到着。

5分ほど待っていると背中の方から懐かしい声が。

「お待たせー!あーきー老けたねー!」

うるさい(笑)

いや、新鮮かもしれない。年相応にみられることはあまりないので有り難い。社会は男は老けていた方が何かと楽だ。

一方、従妹は大人になった印象はあるが昔と大きくは変わっていない。少し背が伸びたくらいか。明るく人懐っこい性格もそのままだ。

僕らはそのまま従妹についていき、従妹の旦那さんと合流して昼食に行くことになった。旦那さんも優しそうな人だ。礼儀正しく、言葉も柔らかい。そして何だか頼れそうな印象も受ける。

昼食は僕がかつ丼が大好物ということでかつ丼を食べに行った。

浜勝のかつ丼

食事中、色々と話をしたが従妹夫婦は仲も良さそうで安心した。ただ二人とも忙しそうでその点だけは心配だ。二人とも頑張り屋さんだが、健康第一に楽しく頑張ってほしい。

そして浜勝のかつ丼は旨かった。沖縄には無いので食べることができて良かった。そしてあのお馴染みの払う払う合戦を経てご馳走までしてもらった。

本来なら従妹の両親に世話になった僕らがごちそうするべきなのだが、また天神でも会う約束をしたので、ご馳走するのはその時までとっておくことにした。

従妹夫婦
従妹夫婦

今日はご馳走様でした。

伯父さん伯母さん、娘は元気にしていたよ。あまり頑張り過ぎないようにも伝えておいたので安心して下さい。

愛車のチャイルドトレーラーがズブ濡れ

18年ぶりに従妹の顔も見れ、良い旦那さんとも話せ、腹も満たされたのでそろそろ天神に向かうとする。念のためにiphoneで天気予報を見る。もうすぐで土砂降りになる模様。急いでトレーラーにカバーをかけなければならない。

が、しかし一足遅かった。

土砂降りはすぐにやってきた。

もう愛車のチャイルドトレーラーはズブ濡れだ。

土砂降りでずぶ濡れのチャイルドトレーラー

とりあえず体だけでも濡らさないよう、レインウェアなどを装着して雨対策をする。これがまた面倒くさい。が、こんな土砂降りではやらないわけにはいかない。

雨対策も終え出発準備が整ったところで、従妹夫婦と最後に記念撮影。

従妹夫婦と記念撮影

今日はおもてなし有難うございました!

あっつい!

従妹夫婦と別れ、再び歩みを進める。雨はかなり強くなってきた。もう止みそうにない。これはゴールまで雨に打たれながら行かなくてはならないと覚悟した。そして1kmほど歩いた頃、雨が突然止んだ。先ほどの大雨とは一転して、眩しい陽射しが出るほど晴れてしまった。

過去のブログを読んでいる方はお分りだろう。レインウェアはあっつい!

雨を通さない点ではとても優れているが、通気性が悪いため晴れてしまうと気温が上がり、レインウェアの中は蒸し風呂状態になる。顔からは汗がだくだく流れ出す。

もう脱ごうと決心した。雨が降ればもう残りの道は濡れて歩こう、仕方ない、と覚悟を決めた。やはり脱ぐと気分爽快だ。とても涼しい。

陽射しは弱まる気配がない。やはり脱いでよかった。陽射しは弱まるどころかどんどん強くなった。たまに小雨が降るが、その程度なら体温を下げてくれるので逆に有り難い。

土砂降りから一転、カンカン照り

土砂降りから一転、カンカン照りで眩しい

都会は人の心をガチガチにする

そしてどんどん風景が都会の街らしくなってきた。歩けば歩くほど都会に近づいているのが分かった。しかしそれにしてもこの格好で都会を歩くのは恥ずかしいかもしれない。

徒歩日本縦断29日目後半、天神に向かう様子

徒歩日本縦断29日目後半、天神に向かう様子02

都会じゃなければ人もそう多くはないので視線を感じてもあまり気にしないが、都会は圧倒的に人が多い。その分視線も多く感じる。そして残念ながら冷たい。誰も声はかけないが、物珍しそうに見る。逆に、見たいけど、興味ないよとばかりに頑なに視線を反らす人も珍しくない。きっと皆興味はあろう。話しかけたい人だって多いはず。実際これまでがそうだった。人の少ない場所や田舎の方ではよく話しかけられた。

どうやら都会というものは人の心をガチガチにするようだ。皆恥ずかしいのだ。周囲のこのクールなような気取ったような、何かきっちりした雰囲気から一人だけポンッと飛び出るのが恥ずかしいのだ。人はそう簡単には変わらない。変われない。都会にいたって皆優しさや人情はある。

でも心は縛られる。それが都会というのもなのかもしれない。

僕も都会育ちでついこの前まで名古屋に住んでいたので気持ちはよく分かる。自分もそうであったから尚更だ。

それにしても何だか切ないなあ。

渡辺通駅を通過
渡辺通駅を通過

結構な都会になってきた

もうすぐゴールの匂い

それでも今日は途中たくさんの声援を頂きながらここ天神まできた。そして20時頃無事、本日の目的地、天神のホテルに到着した。途中で車から見かけてくれた人がこのブログにもコメントをしてくれた。本当に皆さんの声援に助けられている。感謝しながら今日のブログを終えよう。

今日の目的地、コートホテル福岡天神に到着
コートホテル福岡天神に到着

本日の歩行データ

宿泊場所コートホテル福岡天神
歩行距離23.63km(Garmin+GoogleMap)
歩数35,947歩
29日目の歩数
疲労度9/10

コメント

  1. 髙木 紀美代 (おかあさん) より:

    おはようございます ♡ 真夜中にお邪魔 やっと
    見つけられたわよ 元気ね❣️一念歩記が iPad で
    は出なくて … ってよりも 私の ボケが炸裂して
    探し出せなかった …… Σ(・□・;)
    福岡なんだね 昨日はイキナリの雨で … お疲れ
    人生を生きるのと似てるね …… 人生を歩く旅

    • あきら より:

      わお!お母さん!

      コメント待ってましたよー(^-^)

      僕らは元気にやってます(^-^)

      諸事情により今は山口県の油谷青少年自然の家に1ヶ月近くいます。

      ここは一般の方から旅人まで歓迎の施設で、色々な方と交流しながら自然を満喫してます。職員さんも、ほぼ自給自足をしてる方から世界を回ってきた旅人まで色んな方がいて楽しく過ごさせてもらっています。

      お母さんの事はここで触れています。

      http://1hokki.com/day20

      http://1hokki.com/day19

      お母さんも体調にはくれぐれもお気をつけて☆

    • AZ より:

      おかあさん(^-^)待ってましたよ〜♫
      コメントくれて嬉しいです!
      おかあさんも元気ですか?今も熊本ですか?帰ってますか?

      私たちは今、山口県長門市です!こちらも今雷ゴロゴロ大雨降ってきました。

      また、コメント下さいね(*^^*)待ってます♫

  2. 97 より:

    今日はお盆だぞ!
    うーとーとーしれよ!

    • あきら より:

      えーブログと全然関係ないし(^^;了解、うーとーとーする。あ、奥さんとあさとのコメントも待ってま~す!(笑)

  3. 髙木 紀美代 (おかあさん) より:

    山口県に居るのね 行きたいなぁ ♡
    足がね 踵なんだけど 痛めてリタイヤ
    大阪へ戻って 神社へ行きながら ^ – ^
    治してる 当分居るん 山口県の長門
    龍宮の潮吹って有名な所が有るよね
    あずさちゃん達行った?

  4. 髙木 紀美代 (おかあさん) より:

    取り敢えず… ずーーーーっと
    読ませてもらったよ ありがとう♡
    忘れられてるんじゃ無いかと(~_~;)
    でも (^O^)二人とも元気そう
    でよかったわ … まだ当分居るの?

    • あきら より:

      読んでくれて有難うございます!(^-^)まさか!忘れませんよ~(^^)僕らは未定ですが、まだもう少しいる予定です。

    • あずさ より:

      おかあさん読んでくれて有難うございます!
      足痛めたんですね。お大事にして下さいよー(^-^)
      龍宮の潮吹って有名なとこ知りませんでした!検索してみると今いるところから近い!でも13kmはあるので誰か連れてってもらえないかな〜(*^^*)ふふふ

  5. 髙木 紀美代 (おかあさん) より:

    お疲れ様の所もっとお疲れになったのね〜
    私の足が治って 時間が出来たら あなた達は
    何処ら辺りに居るんだろうな …… 楽しみに
    しております … 大阪へ近づいてるよね (⌒▽⌒)

    • あずさ より:

      お母さん応援有難うございます(*^^*)
      この先のルートは日本海側を北上する予定です(^-^)なので大阪は通るかな〜(^^;;
      でもまた是非会いたいですね(*^^*)

  6. 山内です より:

    お二人さま
    お疲れさまです。
    健康で過ごしているようで嬉しいです。
    blogを読ませていただき、思い、考えさせられ
    blogに夢中です!
    ありがとうございます。

    • あずさ より:

      山内さん、blog読んで頂いて有難うございます!

      1つ1つ長いんですけど、読みごたえはあります!ほぼ主人が書いてるんですけど、私も読んでて面白いです(^_^;)

      私達2人が感じた事、主人が考えていること、心を込めて書いています!この旅が出来てること、そして主人が旅を思い立って実際に行動したことに感謝です。色々辛さはありますが日常では感じられない気づきがあって楽しいです。人の温かさも凄い感じています。

      これからも頑張って進んでいきます(*^^*)引続き見守っていて下さいね♫あっと、主人からも山内さんに宜しく伝えてとのことです(^-^)

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