日本縦断136日目(2016年10月18日)
また熊の山
早朝、地元住民が活動を開始する前に出発する。今日の朝食は、昨日おばあさんからもらったバナナの残りとそばのショッピングモールで買った割引の鯖寿司だ。
さて、今日は西舞鶴駅の近くにホテルを予約している。距離にして24㎞ほどだ。
そこでまたコースの選択をしなければならない。遠回りしてでも平坦で熊の出ない海沿いの国道178号線を歩くか、それとも最短で熊が出る山道の府道45号線を歩くか。
結局僕らは今回もまた熊のいる危険な山道(府道45号線)を選んでしまった。もう既に朝から疲れていたので早くホテルで休んで明日に備えたかったのだ。海沿いのコースとの差は5㎞(1時間半)前後だが、僅か5㎞でも余分には歩きたくないしその分も早く休みたかったのだ。
それにもしかしたら海沿いの道はもう少し長いかもしれない。道は実際に歩いてみないと距離は分からないのだ。
とりあえず僕らは早くホテルで休みたかったので、最短距離の山道コースを進んだ。
途中、歩いている道路から天橋立らしきものが見えた。
その後、地元の方を発見し、念のために西舞鶴駅まではどちらのコースが良いか聞くと、海沿いだと言う。というより、山道を通る人はほとんどいないのだとか。
そして山に入っていくと集落があり、朝のゴミ出しのために人がいっぱい集まってきていた。念のためここでも聞いてみたが、やはりこの山道を通る人はほとんどいないのだとか。そしてやはり熊も出るという。「出るかもしれない」ではなく、「出る」というのだ。せめてもの救いだったのは今の時間帯(午前8時頃)は通常なら出ないらしい。
僕らは朝食で食べたバナナの皮やサバ寿司のゴミ(容器には醤油がついている)を持ったままだったので、事情を説明し地元の方のゴミ袋に一緒に捨てさせてもらい気を引き締めて山道を上って行った。
幸い山の奥に入ってみるとそこまで標高は高くないようで、ところどころに集落や民家や畑があった。人とは出会わなかったが人がいるというだけでも気持ち的に違う。
とはいえ、ここは熊がよく出るということなので僕らは会話を絶やさずYouTubeで音楽も鳴らしながら進んだ。しかし残念ながら山は電波が入らない区間があるので、この方法を採用したい旅人の方は注意が必要である。
結局、山を抜けるまで熊と出会うことはなかった。
ところどころに畑や民家がある
途中で見つけた「狩場」という看板。熊がいる山だけに怖い。(どうやら後で調べたら、狩りをする場所ではなく地名か何からしい)
歩いた山道
舞鶴市に入る
民家が見えてきた
山の中の集落
暑いので湧き水で顔を洗う
人だと思ったらかかしだった。結構リアルな作りで一瞬驚いた。
またまた不法投棄されたゴミたち
大量のおにぎり
調度、山を抜けた頃、一軒の民家の前で女性が立っていた。僕らが旅人であることを知ると、おにぎりを大量に差入れしてくれた。自分たち用に用意していただろうに。旦那さんまで出てきて応援してくれる。どうやらこの女性も昔旅人をしていたらしい。
念のためにこの辺に熊は出るか聞いてみると、「ついこの前もそこに居たよ」と30m先を指す。どうやら僕らは運が良かったようだ。もうすぐ進めば熊が出る地域は抜けるというので安心した。僕らは丁寧にお礼を言って先に進んだ。
その後も軽トラに乗ったおじちゃんが、飲み物をおごってくれたりした。
京都は旅人に優しい地域だ。
あるホテルを除いては・・・。
手の平を反すホテル
山を抜けてからはずっと都会の道(都会といっても皆さんが想像するような都会ではない)だったので安心して歩けた。山を抜けて2時間半、時刻は15時、ついに今日の目的地である西舞鶴駅近くの某ホテルに到着した。
フロントに行くと、僕らが旅人だとすぐに気づいてくれた。興奮気味でねぎらいの言葉や声援をくれる。少し旅の話もした。
そろそろチェックインをしようかと思い、その前にトレーラーを預かってもらえるか尋ねると「事務所で預かります」と快く引き受けてくれた。それから問題なくチェックインを済ませ、妻が荷物を整理する間、僕は持てる分の荷物を部屋に運んだ。
残りの荷物を取りに再びフロントへ行くと、スタッフの態度が何やら変である。妻も困った表情。
話をきいてみると、トレーラーが事務所に入らないから預かれないのだと言う。この時からスタッフの態度が一変した。急に冷たくなったのだ。もう到着時の応援してくれた雰囲気はまるでない。彼女の目は冷たい視線に変わっていた。
ホテルとの大まかなやり取りは以下の通りだ。
僕ら:「これ折りたためるので、事務所でも部屋でも入れられますよ。」
スタッフA:「いえ、事務所には置けるスペースがありません。」
僕ら:「なら部屋に入れますね。」
スタッフA:「いえ、自転車は部屋への持ち込みはお断りしています。」
僕ら:「これ自転車じゃなくてベビーカーですけど。」
スタッフA:「それでもダメです。規則なので。」
僕ら:「え??」(ベビーカーを預かれない規則って何?と思いつつも呆気にとられて開いた口が動かず何も言えない。)
しばらく沈黙が続く。
それでも怒りを抑えて冷静に僕らはお願いしてみた。
僕ら:「じゃフロントの前はどうですか?」
スタッフA:「他のお客様のご迷惑になるので・・・」
(置けるスペース十分あるのになぜ??)
僕ら:「ならどうしたらいいですか?」
スタッフA:「・・・外に置いてもらう他ありません。」
僕ら:「え!?盗まれたりいたずらされたらどうするんですか?」
スタッフA:「それはちょっと・・・。責任は取れません。」
僕ら:「つまり泊まるなということですか?」
スタッフA:「いえ、そうは言ってません。」
僕ら:「ならどうしろというんですか?荷物を部屋にも入れられない。預かると言ったのに預かってももらえない。」
スタッフA:「・・・」
今一度落ち着いて、再度部屋に持ち込めないか、もしくはホテル側で預かってもらえないか確認するも答えは変わらず。態度も冷たいまま。
そしてしばらく妻と相談した結果、仕方なく宿泊をキャンセルすることに。
まさかの責任転嫁!?
フロントでキャンセルの手続きをしようとすると、ホテル側の言葉に僕は耳を疑った。
「それでは当日のキャンセルとなりますので、キャンセル料80%頂きます。」
ベビーカーを預かると言ったからチェックインしたのに、後になってやはり預かれないと言い、さらには部屋への持ち込みもチェックイン後にダメと言っておきながらキャンセル料まで取ろうというのか!
ベビーカーを持ち込めないのは理不尽な規則だとは思うが、そちらの規則なら仕方がない。そういうホテルだと理解する他ない。こちらは利用する側なのだから。
しかし、最低でも預かれない持ち込めないならチェックインの前に言ってくれ。これではまるでキャンセル料だけぶんどろうとしているようにしか思えない。
スタッフAは手の平を返したように態度も言葉もすっかり冷たくなっていた。先ほどのねぎらいの言葉は何だったのか。
すると自分たちに非があることを本音では感じていたのだろう、
「通常はキャンセル料を頂くのですが、今回は特別に。」
とあたかも僕らが悪いかのように話す。そして続けて
「ただしお部屋が汚れていないかだけはチェックさせてもらいます。」
と最後まで僕らを追い込んでくる。いったい僕らが何をしたというのか。もちろん部屋には入り口に荷物を置いただけなので汚れているはずもない。スタッフAは渋々納得した様子。
結果的にキャンセル料は取られずに済んだが、気分は最悪だ。時間もかなりロスした。もうすぐ陽が沈むというのに、突然宿無しとなった。ここは都会だ。野宿できる場所なんて無い。
とりあえず当てもなくホテルを出ることに。すると気持ちのこもっていない「有難うございました」が後ろで小さく聞こえた。
疲れきった僕らは反応することさえできなかった。
夜の街をさまよう
さて、ホテルを出たはいいが全く当てはない。2~3㎞戻れば道の駅はあるが来た道を戻るのは精神的につらい。往復で考えれば距離も倍だ。
ということで僕らは当てもなく東舞鶴駅周辺に向かった。そこならいくつか公園もあるし、ホテルなどの宿泊施設もいくつかある。
1時間ほど歩くとついに陽が暮れてしまった。辺りは真っ暗だ。でもまだ寝床は決まっていないし、ここがどこかも分からない。暗くて道もあまり見えないがとりあえず進むしかない。
ホテルを出て2時間ほどでようやく東舞鶴駅周辺に着いた。
寝床を探しながら歩いていると小さな公園(東門公園)を発見。隣にはコンビニもある。すぐ裏手にも別の公園(北吸公園・北吸テニスコート)がある。
疲れたのでとりあえず休憩がてらコンビニで夕食を買って食べながら寝床を決めることにした。幸運にもコンビニで仕事帰りの男の人達からカンパを戴けた。先ほどのホテルの件で気分が沈んでいたが、少し救われた気がした。
夕食を食べ終えると、もう一度裏手の公園に行ってみたが周囲が森に囲まれていたので却下となった。しかも屋根もないし、少し地面が斜めに傾いている。トイレも奥の方にあったのだが、真っ暗だし森と公園の間にはフェンスなどないので危険と判断した。
後ほど地元の人に聞くと、森でないとのことだった。単に木がたくさん生えている丘?のような場所らしく熊はいないのだとか。
コンビニの隣の公園(東門公園)もコンビニの隣で目立ちすぎるので却下となった。
途方に暮れた僕らは1㎞ほど離れた大きな公園(前島みなと公園・前島テニスコート)に向かった。
公園内は一部を除いては真っ暗である。どうやらここはテニスコートのようだ。テニスコート以外は真っ暗なので、周囲に気付かれず野宿ができそうだ。あずまやを発見するも、先約がいるようで寝支度をしている。
さらに公園内を歩いていると犬の散歩に来ていた年配のご夫婦に出会った。この周辺の治安について聞いてみたら、この周辺は案外治安は良いらしい。そういえば、公園の真ん前にも警察署があった。本当はお家に泊めてもらいたかったが、この時はまだお願いする勇気がなかった。
そうこうしているうちに時刻は20時半を過ぎていた。いつもなら寝ている時間だ。僕も妻もくたくただった。もう動く元気もない。もうここでいい。ここで野宿しよう。
決断した僕らは公園の奥にある人が来なさそうな場所にテントを立て、早々に眠りについた。
翌朝撮影(夜は真っ暗で何も見えない)
翌朝撮影
コメント
精神的にどっと疲れが出たのが、想像できます。暖かいベッドと風呂を楽しみにしていた分、余計に疲れますよね。このホテルを利用した事は無いのですが、よく前を通るので分かりました。東舞鶴のテント泊された直ぐ先に、目的地の北海道(小樽)行きのフエリー乗り場もあったのですが、お二人はまだまだ歩かれるのでしたね。
まさに仰る通りで、距離的には短くても疲れが溜っていたので少しでも長く休むために選んだホテルだったので本当にがっかりしました。一旦預かると言ったはいいが後になって預かれず、それでも責任は客にとってもらおうという態度には呆れました。
フェリー乗り場の存在は知っていました。一瞬誘惑にかられ、北海道から南下してきても良いんじゃないかと。でも諦めず歩いて良かったです。
後日すれ違うもう一人の日本縦断中の彼は、この地の道の駅「舞鶴港とれとれセンター」から南下して、瀬戸内海を目指していました。
そうみたいですね。数少ない貴重な徒歩ダーに出会えて嬉しかったです。(^-^)