11日目:死が頭をよぎる

歩記

日本縦断11日目(2016年6月15日)

前回(10日目)の歩記はいつもより反響があり、一生懸命書いた甲斐がありました。嬉しい限りです。

そして今日は少しテイストが変わりました。変えたのではなく、記憶を振り返っていると自然に変わってしまったのです。ノリがよく、筆が走ったのでそのままノリに任せて筆を走らせてみました。

昨日はたくさんの出会いもあり、感動もありで濃い一日でした。さて、今日の旅はどうなることやら。

それでは日本縦断11日目、歩記始めます。

2回目の野宿も全く眠れなかった

前回の歩記にも書いたように、今回の野宿も1~2時間ほどしか眠れなかった。

やはり国道は夜中でもトラックの騒音が凄い。さらに反対側からは荒波がバシャンバシャンうるさい。あげくのはてには虫がテントの生地の外側を夜中中ガサガサ這いまわる。もう最悪の夜だった。

野宿の邪魔をした波(写真では分かりにくいが、かなりの騒音である)
野宿の邪魔をする波

逃げ遅れたテントをガサガサ這いまわっていたい虫
野宿の邪魔をした虫

とりあえず道の駅のお店が営業を始める前に綺麗にして去らねばならない。

しかし野宿は準備も大変だが、片付けも大変である。案の定今日も1時間半かかった。やはりフライ(テントを覆っている緑のシート)が今回もびしょ濡れである。中の湿気が外に逃げないからだろう。おそらくペグ(テントを固定する釘)を打たず(整備された地面なので打てない)にいるから、フライとテントがくっついてしまい、換気ができていないと思われる。

後日のテント泊でペグを打ったら換気が上手くできた。

テント片付けの前に歯磨き

フライを取ったテントの様子

フライを取ったテントの様子02

テントのフライ(緑のシート)を乾かしている
テントのフライを乾かす

ちなみにここ道の駅阿久根で僕らは全く寝ることができなかったが、翌日ここでプロの旅人が野宿することになるのだが、彼はぐっすり眠れたのだそうだ。やはりプロは違う。数日後に彼と出会うことになるのだが、今までに会った旅人の中でも桁が違っていた。そしてその後も再開することになる。彼については数日後の歩記をお楽しみに。

清々しい出発

野宿なのでホテルのように朝食をゆっくり摂る必要はないので出発はいつもより早い。朝は車通りもなく国道にしては割と静かだ。

日本縦断11日目出発

歩も軽くなる。

日本縦断11日目出発02

ふと横を見ると陽に照らされようとしている山々と川が目に入る。朝からこんな景色が見られるなんて、なんと贅沢なことか。

陽に照らされようとしている山々と川

僕は昔から花には興味がない。理由は単純である。食べられないからだ。昔から食べられないものには興味がない。花を贈られようものなら内心「肉をくれ」と思っていた。なんてつまらない男だ。

しかし今は違う。特にこの旅に出てからは違う。歩く旅に花や植物、昆虫に目が行く。今日も綺麗な花が下から声をかけてきた。撮らずにはいられなかった。

綺麗な花

沖縄ではめずらしいが、鹿児島の国道にはずっとカニがいる。しかもうじゃうじゃいる。今日は間近で発見したので記念撮影をしてあげた。すぐに歩道から草の中に隠れたが、隠れきれていない。

カニも声援

カニも声援02

前半はカメラ小僧に徹する

清々しいのでとんとん拍子に距離を踏めた。なので今日はカメラ小僧に徹してみた。一眼レフカメラを買って早一年。全く使いこなせていない。宝の持ち腐れとはまさにこのことだ。カメラ小僧になりきってピンときたものをパシャパシャと撮っていった。

牛ノ浜駅のレトロ風看板
牛ノ浜駅のレトロな看板

石に刻まれた阿久根浜唄
阿久根浜唄

今朝通ってきた道(けっこう快速で歩いてきたようだ)
今日通ってきた道

牛ノ浜駅で有名な鳥居。鳥居に沈む夕陽を撮影するために多くの写真愛好家が訪れるらしい。昨日のカメラを直してくれた優しいお兄さんも道の駅阿久根に来る前にここで鳥居に沈む夕陽を狙っていたらしい。
牛ノ浜で有名な鳥居

綺麗でおしゃれな阿久根駅
阿久根駅

またまた現る元強者旅人

今日は特にトラブルや出会いなども特になかったので快調に距離を進めることができた。撮影も楽しめた。しばらく歩ていると前からドリンクを持って走ってくる男性がいた。

とても雰囲気の良い男性だ。爽やかで温かく、瞳と笑顔が透き通っていた。ただの通りすがりの応援者ではないなと思っていたら、やはりそうだ。この方もまた自転車で韓国や南米を旅して回っていたらしい。長い事旅人をしていたが今は真面目に働いていると言う。僕は別に旅人が不真面目だとは思わないが、世間はどうやら違うらしい。やはりここでも自分の社会との認識のずれを知る。

男性は仕事の移動中に僕らを見つけて昔の旅人魂がうずいたらしく、時間のない中わざわざ差入れを買って追いかけてきてくれたのだ。名前も知らない通りすがりの人間になぜ人はここまで温かいのだろう。

つくづく感謝するばかりだ。

旅をする前は世間は金の為に生きている人ばかりだと思っていたが、案外そうでもないようだ。心で生きている人もいっぱいいるではないか。いつも決まった環境で生きているとどうしても視野が狭くなる。そして偏った視点で物事を捉え、それがあたかも社会であるかのように決めつけてしまう。

これを打破しようという狙いもこの日本縦断の旅にはある。

さて、この男性は旅をしている間、似顔絵を描いて売ってそのお金で旅をしていたそうだ。通常寄せ書きは皆さん文字で戴くが、似顔絵とはまた粋である。書いているお兄さんも昔を思い出すのかイキイキしている。見ている僕らも嬉しくなってくる。

嬉しそうなお兄さん
応援メッセージを書いている

笑顔が透き通っているお兄さん
旅の先輩と記念撮影

僕もこのまま旅を続ければこの荒んだ笑顔がお兄さんのような素敵な笑顔になれるだろうか。期待をもって旅を続けることにしよう。

しかしそれにしても上には上がいるものだ。韓国や南米を旅したとは。。。

僕は旅人気取りだが、実は海外に行ったことがない。なのでお兄さんが凄くもあり羨ましくもある。しかしこの刺激がまた冒険心をつつくのである。ああ嫌な予感。また変なことを考え出している自分が・・・。

いやここは無視しよう。流そう。

名残惜しかったが、お兄さんとはお礼を言って別れた。

ちなみに差入れは気を利かせて小さなお茶と栄養ドリンクだった。深読みかもしれないが、スポーツドリンクは持っていると予想して敢えてお茶にしたのかもしれない。そして歩き旅なので荷物にならないようサイズも小さめを選んでくれたのかもしれない。栄養ドリンクもサクッと飲めるので空き瓶もすぐに処分できる。

さすが元強者旅人だ。旅を熟知している。ファイト一発である。(さすがにここまでは考えていないか(笑))

お兄さんからの差入れ

山中でほぼ食料が尽きる

時刻はお昼少し前。そろそろお腹が空いてきた。今日は野宿明けなのでいつものようにホテルの朝食などはない。昨日それといった食料を調達することができなかったので、今朝は二人でパン3つしか食べていない。日常生活ならそれだけ食べれば十分だが、今は徒歩で日本縦断中である。毎日30km前後歩く。午前中だけでも10~15kmは歩く。

パン3つでは完全にガス欠だ。しかも前日の夕食も質素にカップラーメンである。妻は足りでも僕には足りない。僕は小柄だが結構食べる。食べ過ぎないよういつも妻に食べ過ぎかどうか確認してお代わりするかどうか判断する。

そんな僕が連日少ない食糧でもつはずがない。しかも日常生活とは違う。今は旅の真っ最中だ。

どうやら妻も空腹らしい。

まずい。ここは山の中だ。歩けど歩けどお店はない。一軒だけ商店みたいな店はあったが、もうずいぶん前に廃業している様子。

とりあえず水分だけでも摂ろうと一休みすることにした。

まずい。危険水域に入ってきた。二人とも糖分が足りず頭痛もしてきた。とりあえず差入れで戴いた飴や黒糖でしのぐ。

20分ほど休憩を取り、再び歩き出した。しかし歩けど歩けどお店はない。二人ともギリギリだ。グーグルマップを見てもこの先コンビニもなさそうなだ。

やばい!まずい!

焦る。

山が徐々に終わりに近づいた。すると林の端っこから飲食店のような建物が見えた。

安心するのはまだ早い。定休日ということはこれまでにも経験済みだ。

確かめると開いている。

お客さんも入っている。

しかも隣はパン屋だ。そしてその奥は小さな農作物の直売所だ。

弁当戦争勃発、負けられない戦いがそこにはある

とりあえず直売所から行った。なぜならトレーラーがあるからである。これを店内に入れるわけにはいかないので、これまでも飲食店には入らずコンビニで食べ物を買って外で食べてきた。

直売所なら弁当が売っているはずだと思い直売所を選んだ。予想は的中。美味しそうなお弁当屋惣菜がちらほらある。

しかし先客のおばあさんがドサドサとカゴに弁当を詰めていく。他の客も我先にと弁当やら美味しそうな惣菜を取っていく。みんな常連なのだろう、躊躇なく取っていく。

万事休す。。。

最後の一個も取られた。

弁当はもう売り切れだ。

弁当を取ろうとしている間に惣菜もほぼなくなっていた。あるのは簡単な巻きずしと魚の南蛮酢和えなどわずかな惣菜のみ。

救世主現る

もうほぼ何もない。さあどうする。もう四の五の言わずお餅などのお菓子を取るとするか。背に腹はかえられない。しかしここで糖分以外の栄養も取っておかなくてはこの先いつ食料を調達できるか分からない。

悩む。

隣のパン屋にするかその隣のうどん屋(たぶんうどん屋だった気がする)にするか。妻と相談する。

「こんにちはー!」

店内に響く高い声。ふと入り口を見ると何かの業者さん。手元をよく見ると大量の弁当。ななななんと弁当屋さんではいか!!

来た、救世主!!

今度は先に取られまいと弁当が並べられる前に、ポジションを確保。もう今の僕らに遠慮はない。優しさもない。老若男女みんなライバルだ。必ず弁当をゲットする。そこには負けられない戦いがある。

手も腰の位置まで上げてスタンバイOK。あとは業者さんが並べてくれるのを待つのみ。

ガサ、ガサ、ガサ、ガサ、

どんどん弁当を並べだした。ここでこれまで2年間ジムで鍛えたこの筋肉と瞬発力を能力の許す限り発揮する。

サッ、サッ、

素早く2個ゲット。

任務完了。

とりあえずこれで生き延びられる。もう勝負ありだ。勝敗は決した。僕らは勝利したのだ。生き延びられると分かったとたん安心して欲が出る。もっと美味しそうな弁当を取ろう。

先ほどカゴに弁当を詰めたおばあさんも、同じだ。先ほどの弁当を戻して、新しいものと交換し始めた。

だが時すでに遅し。

既に僕が美味しい弁当と交換していたのだ。そしておまけに美味しそうな唐揚げまでゲットした。もうハットトリックだ。本田だ。香川だ。いやロナウドだ。いやメッシだ。

もう僕を誰も止められない。誰もいないお菓子コーナーに攻め込む。お餅にするか、伝統菓子なるものにするか。ふと後ろを振り向くと冷凍庫がある。

ん!

中にアイスがあるではないか!しかも栗アイスなるものがある。かなり美味しそうなパッケージではないか。栗が好きというわけではない(どちらかというと嫌い寄り)が、今日は暑い。冷えた物を口にしたい。栗は糖分が取れるし、なんといってもこの栗の形をしたモナカが気になる。

妻もアイスと聞いて目が輝いている。

「よし栗アイスにしよう!」

試合終了である。

ハットトリック(弁当×2、唐揚げ×1)+PK(栗アイス)。もう満足だ。弁当たちを持って悠々とお会計へ。店員さんに「ここ弁当人気ですね」と話しかけられる余裕も出てきた。

すると店員さんは「そうなんです。この辺はお店がないから皆さん買いに来るんですよ。」と言う。

一瞬ゾクッとした。やはりそうだったか。やはりこの辺は何もないのだ。ここを逃せば大変なことになっていた。ギリギリ着くことができてなんとか命拾いをした。

もしこの三軒が定休日だったらと思うとそれもまたゾッとした。

勝利の余韻に浸りながら外のベンチで温めた美味しそうな具だくさん弁当と唐揚げを並べる。まるで優勝トロフィーだ。

購入した弁当と唐揚げ

ちなみに弁当はこれで400円だ。沖縄の弁当と比較してはいけない。沖縄は別格だ。僕らの経験上、内地ではこの金額でこの量なら多い方だ。

そして美味い。お腹が空いているからさらに美味い。

二人ともそれはもう家畜のようにむしゃぶりついた。もう獣だ。

ものの数分で弁当は空に。唐揚げもジューシーで美味かった。

満足である。

しかし最後の栗アイスが残っている。実は栗アイスは先ほど購入しなかった。外のベンチで食べているので食後までには溶けるからである。妻が栗アイスを買ってきた。

パキパキと歯でモナカを割りながら栗アイスをゆっくりと食す。もうむしゃぶりつく必要はない。腹は満たされたのだ。あとは勝利者インタビューのようにじっくりと勝利を味わうかの如く、冷えと糖分を摂取するのみである。慌てる必要はない。

ふと周囲を見渡すとどんどんお客さんが弁当を買いに来るではないか。もう遅い。美味しい弁当は僕らの胃の中だ。試合は終わったのである。

心身ともに回復した僕らはもう直売所を振り返ることなく再び旅路に戻った。

残り門司まで300km

鹿児島入りしてもう100km近く歩いただろうか。門司まで残り300kmのプレートが現れた。

門司まで300km

しばらく歩いているとタカだろうか、ワシだろうか、それともトンビだろうか、見える範囲だけでも上空を7~8羽は飛び回っている。カメラに収まりきらないが、かなり遠くにもたくさん飛んでいる。

我々を歓迎しているのか、それとも警告しているのか。先ほどまで山中で空腹のためほんの一瞬とはいえ死をイメージしたからか、何かこの鳥たちが不気味に感じた。

暗くなる前に宿へと急いだ。

タカかワシかトンビ?の群れ

タカかワシかトンビ?の群れ02

タカかワシかトンビ?

本日の歩行データ

その後は何事もなく無事本日の宿、ホテルAZ鹿児島出水店に到着。

ホテルAZ鹿児島出水店に到着

宿泊場所ホテルAZ鹿児島出水店
歩行距離26.03km
歩数37,517歩
11日目の歩数
疲労度10/10

コメント

  1. モッサン より:

    海沿いはフナムシがキツいですね(>__<)

  2. モッサン より:

    なぜかコメントが一行しか投稿されてなかったです(汗)

    騒音よりもフナムシの不快感で寝れなそうですね><;
    これから暑さも激しさを増しますし、
    くれぐれも体調に気をつけてがんばって下さい!

    って続き打ってました(^^;)

    • あきら より:

      有難うございます(^-^)

      今キャナルのモンベルで装備を整えました!キャナル内ももちろんトレーラーで^^;

      それでは今日も3号線を宗像まで行きます!

      応援有難うございます(^-^)

  3. フォートプラン 鬼塚 より:

    今日は七夕です。
    無事に縦断できますように!
    と願いました(*^^)v

    思ったより早いペースで歩いてますね。
    来週、実家の福岡に戻るんですが、奇跡的に会えますかね(´・ω・`)
    楽しみに毎日見てます。

    では、また!!

    • あきら より:

      有難うございます!(^^)
      今日、小倉に着きました!

      七夕は味わう余裕もなく夜まで歩いて疲れてました~(*。*;

      帰省されるんですね!
      タイミングが合えばお会いできると嬉しいです(^-^)

      台風をやり過ごすために小倉にしばらく滞在する予定でしたが、
      今調べたら台風なくなってるみたいですね(^^;

      とりあえずホテル抑えちゃったので、
      休憩して来週中頃には山口県に渡る予定です。

      いつも応援有難うございます!(^-^)

  4. 97 より:

    ちゃんと塩なめとけよ!

  5. あたぼっぎぶ より:

    タイトルで『は?!まじか?!』と焦って読み進めていったら、弁当のくだり、熱すぎだろwww
    臨場感あふれすぎて、伝わりまくりました笑

    本当にいつも素敵な出会いがあるね〜
    あきらのブログ通して、図々しくも疑似体験させてもらってます\(^o^)/
    今日もステキな1日になりますように🌼

    • あきら より:

      いや結構、際どかったよ(^^;

      山の道はいつ終わるか分からんし、人は元々ほぼいないんだけど車もどんどん少なくなってくるからさ~。
      山奥で二人とも空腹で倒れたら終わりだなぁと危機感は高かったよ(^^;

      しかも山の次は山ってことがよくあるからね。

      疑似体験できるでしょ~(^^)俺も先人たちのブログ読んでもう何回か日本一周してるよ(笑)

      ちなみに今日もまた素敵な出会い?再会?はじめまして?がありました~♪(^^)

      詳細は後日!

  6. F君 より:

    野宿の時、耳栓使ってみたら?
    あと、虫よけの腕輪がホームセンターや薬屋で800円くらいで売ってるよ。
    コンビニにもあるかも。
    テントまわりに置くと少しはいいかもよ。

    • あきら より:

      耳栓やってみようかな!

      虫よけのスプレーはテントに吹きかけてるけど、フナムシにはきかなかった(^^;
      でも出発前に国道通れってアドバイスもらったように、これが国道じゃなかったらマジ死んでたかも(^^;国道でも山は人も車もほぼいない!

タイトルとURLをコピーしました